【完】素直になれない君と二度目の溺愛ウェディング
俺は断然レナの方がタイプだが、岸田ちゃんは周りから一目置かれる程目を惹く女性であるのは間違いない。
そして上昇志向の高いタイプの肉食系女子である。 本人は口にしなくとも、プンプンと匂ってくる。 自分の鼻は確かだと自負している。
優雅に微笑む上品な身のこなし。 美しい花のような女性の正体は虎だ。 彼女のような人間こそが本物の’恋愛の達人’なのかもしれない。
「元気よ。 海くんも元気そうじゃない。 また一緒に飲みたいものねえ」
「いいね。 今度時間が合う日にでも」
「そんな事言って相変わらず忙しいんでしょう?」
「いやいや、岸田ちゃんの方こそ声掛けて来る男だらけなんじゃないの?
なんせ営業課はイケメンが多いからね」
俺の言葉にふふっと含みを持った笑みを浮かべる。 断じて彼女が狙っているのは俺ではない。 俺に善い顔をするのは、その後ろにほっくんという存在がいるからである。
そう、岸田ちゃんの狙いはずっとほっくんであり、阿久津フーズファクトリーの次期社長夫人の座なのである。 俺はその間のパイプ役って所か。