【完】素直になれない君と二度目の溺愛ウェディング
―――――
実はデートらしいデートをするのは久しぶりだった。
恋愛の達人というほど達人ではないが、自分は余り人を好きにならないタイプなのかもしれない。
よく周りからは達観していると言われる。恋愛をしていてもどこかのめりこめなくて冷静になってしまう自分が居た。
最後に付き合ったのは大学時代に出来た彼女で、社会人になっても一年目までは付き合ったが何となく終わりを迎えた。
人を余り好きにならない自分にしては珍しく積極的に行動していると思う。 だってレナは今まで俺の周りに居そうで居なかった女性だ。
まずチェリーチョコレートカンパニーの社長令嬢っつー大企業のお嬢様と出会う機会もなかったし、今時あんな一途な女性も珍しい。ああまで頑なで意地っ張りな子も早々いやしないだろう。
待ち合わせ先の駅に十分前到着したけれど、既にレナは着いていた。 俺とのデートなんていやいやなはずなのだが、こういう真面目な所もいいんだよなあ。
ほっくんと飲みに行く時も必ずレナは先に来ている。 仕事の都合でどうしても遅くなる時は必ず断りを入れて、遅れた事を毎回のように謝る女だ。
律義で真面目な性格なのだと思う。
黒のスキニーにブルーのサマーセーターを身にまとう。彼女らしいと思う。
携帯を手に取り、姿勢良く立っているとモデルさんにも見える。
駆け足で彼女の元へと向かうと、俺に気づいて顔全体で嫌な気持ちを表現した。 …なんて可愛らしい。 眉をひそめ口をぐちゃぐちゃに曲げるのだ。そんな姿さえ愛らしい。