入れかわりクラスカースト
「なんか用?」
美香の家を訪ねると、面倒くさそうに本人が出てきた。
どうやら、家の中には入れてくれないらしい。
「うん、ちょっとカンナのことで」
「カンナのこと?」
「そう。あの子、誰かに恨まれてたのかな?」
「さぁ、私は別に興味ないし」
冷たく突き放すような物言いは、明らかに美香そのものだった。
カンナのことなんか、なんとも思っちゃいない。
きっと、私のことも…。
「夕子じゃないかな?」
私が『夕子』の名を口にしても「私には関係ないから」と、美香は表情ひとつ変えなかった。
やっぱり、目の前の美香は本物だ。
あの夕子が、ワケの分からないことを口走っているだけなのか。
「あっ、あとこれ」
そう言って、CDを差し出す。
「ありがとう。借りたままになってたから」
「あっ、そうだったわね」と、美香がCDを受け取る。
「じゃ、また明日ね」
軽く手を振って、美香の豪邸を後にした。
振り返りたかったけど、なんとか我慢をして角を曲がり「ふー」と止めていた息を吐き出す。
いや、まさかそんな…。
思わず振り返ると、お屋敷が見える。
「うそでしょ?」
ぼそりと呟く。