入れかわりクラスカースト
「まぁ、いいわ」
足を離して、優しい声を掛ける。
「大目に見てあげる。私の条件に従うのなら、あんたが夕子を殺そうとしたことは黙っててあげるわ」
「…条件?」
「そう、これから一生、私の奴隷になるならね」
『女王様』から『奴隷』への転落。
そもそも夕子は奴隷ですらない。だから選ぶ権利はないのだが、警察に突き出してしまうには惜しい気がした。
目の前に、美香が転がっているんだ。
首輪をつけて連れ回すには、これ以上ない存在。
そしてその鎖を掴んでいるのは、新たな女王であるこの私。
私の価値を雲の上まで突き上げてくれるはず…。
「どう?警察に捕まるよりはマシだと思うけど?」
「それでまた…私のことをいじめるの?」
それはまさに、夕子の声だった。
「そんなことしないわよ。ただ、2番目ってだけ。あくまでカーストトップはこの私。あんたはそうね…下僕ってところかしら?」
「下僕…」
「そう、げ・ぼ・く。嫌なら別にいいわよ、警察に動画を──」
「分かったわ」
美香が負けを認めた。
私が、美香に勝ったんだ!
中身が夕子なんて、この際どうでもいい。
肝心なのは、この女をねじ伏せることができたということなんだから。