入れかわりクラスカースト
悔しげに唇を噛み締める美香を、私は見下ろす。
立場が完全に入れかわったというのに、なんだか気が晴れない。
それは…この女が美しいからだ。
私だって、道行くひとがすれ違うくらい綺麗なのに。
どうしても、こいつには敵わない。
いくら精神的に上に立ったとはいえ、なにか明らかな印が欲しい。
誰が見ても、私の方が上なのだと──。
「な、なにしてるの…?」
震えた声で尋ねてくる夕子を無視し、机の中を漁る。
あった。
取り出したのは、カッターだ。
じりじりと刃を出すと、目を見開く夕子に近づく。
「あんたが私の下僕だっていう、印をつけないとね」
「や、やめてっ」
「やっぱり頬っぺたがいいかな?それともおでこ?」
「な、なんでこんなこと…まどかだって綺麗じゃない!それだけ綺麗なら、別にいいじゃない!」
それは紛れもない、夕子の心の叫びだった。
「そう、私は綺麗よ。この顔に生まれて親に感謝してるわ」
「それじゃなんで!?」
「じゃ、なんであんたは私と入れかわらなかったわけ?」
「そ、それは…」
「美香が1番だもんね。でも、傷物になれば誰も振り向きはしないわ!」
私はカッターで、美香の頬を切りつける──。