入れかわりクラスカースト
ハサミを引き抜き、胸に突き刺す。
胸に突き刺して、そして引き抜く。
取り憑かれたように、私はその行為を繰り返した。
「私は美香よ!」という、呪(まじな)いとともに。
悲鳴が上がろうが関係ない。
私が美香だと知らせることが、なにより大事なんだ。
「夕子のくせに!」
こいつが夕子だと、皆んなに教えてやらなくてはいけない。
私たちは入れかわったのだと。
カンナもまどかも、こいつに殺されたんだ。
こいつのせいで、化け物みたいな顔に──。
ぐさり。
刃を突き立てると、夕子の体がびくんと跳ね上がる。
返り血を浴びながら、私は嬉々として刺しまくった。
勝つのは私なんだ。
どうだ、やり返せないだろ!
最後に勝つのは、この私なんだ!
「あはははははは!」
勝利の雄叫びを上げながら、それでも私は刺すことをやめなかった。
殺してしまえばもう、元に戻れないのに。
美香に戻ることができないのに。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!」
負けることだけは、どうしても許せなかった。
この女に負けることだけは。
夕子に負けることだけは。
だから、無我夢中でハサミを振り下ろしていた私は気がつかなかったんだ。
聞こえなかったんだ。
夕子の断末魔の呟きが…。