入れかわりクラスカースト
初めこそ立ち向かっていた夕子も、いじめがエスカレートしていくと表情を無くしていく。
それほど、美香たちの悪意は凄まじいものだった。
夕子は私を庇って、身代わりとなったんだ。
私と入れかわった…。
いじめがどれだけ辛いものか、私はよく分かっている。
だから夕子を助けたかったけど、よく分かっているからこそ、どうしてもそれができなかった──。
「ひろ子、ちょっと」
まどかに呼ばれたら、従うしかない。
校舎裏までついていくと、そこにいたのは柱に縛られてぐったりしている夕子だった。
「はい、プレゼント」とカンナが私に手渡してきたのは、野球のボール。
丸くて硬い感触が、手のひらから伝わってくる。
「えっ…」
「ちゃんと狙って当てなよ」
見本を見せてやると、まどかがボールを投げた。
「うっ!」
肩に当たり、夕子が呻く。
「ほら、早く投げろって」
「で、でも…」
いじめに加担するなんてこと…しかも私を助けてくれた夕子にボールをぶつけるなんて──。
「じゃ、また入れかわる?」
美香の冷たい声が、私の心まで凍てつかせる。
ボールが鉛みたいに重い。
「…ひ、ひろ子?」
ぐったりしていた夕子が、目を見開く。
「ご、ごめん!」
私が投げたボールは、夕子の頭に直撃した。