入れかわりクラスカースト


『私は幽霊、私は幽霊』


そんな呪文を唱えながら、教室に入る。


存在を消すことには慣れた。


存在しないように扱われることも。


始業直前、スーッと椅子に座る。


すぐに先生がやってくるから、美香たちもいじめる間がないはずだ。


「美香ちゃん、それブランドじゃん!」


カンナのアニメのような声が聞こえてきた。


「えっ、その財布、限定品だよね?」


まどかも驚いているようだ。


そっちのほうは見ないように気をつけても、耳だけは声を拾ってしまう。


でも大丈夫。


今のところ、私には関心がない様子だ。


「ママに買ってもらったの」


美香が答える。


『ママ』はとっても優しく、美香の言うことはなんでも聞いてくれるのだと。


お金持ちで可愛くて、何不自由なく生きている美香。


貧乏でブサイクで、ずっとお腹を空かせている私。


神様なんていない。


いるわけがない。


それどころか、私には死神が取り憑いている。


そのことがはっきりしたのは、給食の時間だった。


「えっ、ないんだけど!?」


美香の声に、教室の空気が張り詰めた。


「私の財布が盗まれた!」




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