入れかわりクラスカースト
「ならいいけど」
優作はカバンを手に、教室から出て行こうとする。
「あ、あのっ、秋元くん…」
「ん?」
「あ、ああっ、ありがとう」
俯いたまま言葉にする。
カースト底辺の私に、声をかけてくれるなんて。
それだけで私は救われる。
それだけで私は生きていけるから。
「奥田さぁ」
「えっ!?」
いつの間にか目の前に立っていた優作に、驚いてしまった。
「もっとこうして──」と、優作の指が私の前髪をかき分ける。
「表情とか見えたほうがいいな」
「えっ…」
思わず顔を上げ、優作とばっちり目が合ってしまった。
「このほうが可愛いよ」
「あっ、あっと…」
「じゃあな、負けるなよ」
私の頭をポンっと叩く優作に「ありがとう」とお礼が言えたのは、優作が教室から出て行った後だった。
手の温もりがずっと、頭に残っている。
それは少しずつ体全体に広がっていき、心臓のあたりがほっこりと温かかった。
私は負けない。
負けそうになったら、この温もりを思い出すんだ。
それはきっと──命の温もりだから。