入れかわりクラスカースト


「なんかいい事でもあったの?」


母の晴美が、化粧をしながら鏡越しに言った。


「さては、男?」と、嫌らしい笑みを浮かべる。


最近の母は、付き合っている男とうまくいっているのか、機嫌が良かった。


私が答えないで黙っていると、フンっと鼻で笑う。


「男なんて信じちゃいけないよ。あんなもの、なにひとつアテにはならないからね」


口紅を唇に染み込ませ、晴美が続ける。


「あいつらはすぐに裏切る。だから信じられるのは自分だけさ」


そこまで言った時、アパートのドアが乱暴に開いた。


「おい、早くしろよ!」


でっぷりと太った男が、靴のまま部屋を上がってくる。


「ちょっと待ってよ〜」


晴美が猫撫で声を出す。


どうやら、新しい彼氏らしい。


禿げ上がった男は私に気づくと、舐めるように全身を見やった。


「娘か?いくつだ?」


グッと距離を詰められ、思わず身を引く。


「まだ15だよ!愛想が悪いのよ」


「15かぁ」


鼻息荒く近づいてくる男。


「やめときな!あんた捕まるよ!」


晴美はさっさと身支度を終えると、男を連れて出て行った。


< 27 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop