入れかわりクラスカースト
「なんかいい事でもあったの?」
母の晴美が、化粧をしながら鏡越しに言った。
「さては、男?」と、嫌らしい笑みを浮かべる。
最近の母は、付き合っている男とうまくいっているのか、機嫌が良かった。
私が答えないで黙っていると、フンっと鼻で笑う。
「男なんて信じちゃいけないよ。あんなもの、なにひとつアテにはならないからね」
口紅を唇に染み込ませ、晴美が続ける。
「あいつらはすぐに裏切る。だから信じられるのは自分だけさ」
そこまで言った時、アパートのドアが乱暴に開いた。
「おい、早くしろよ!」
でっぷりと太った男が、靴のまま部屋を上がってくる。
「ちょっと待ってよ〜」
晴美が猫撫で声を出す。
どうやら、新しい彼氏らしい。
禿げ上がった男は私に気づくと、舐めるように全身を見やった。
「娘か?いくつだ?」
グッと距離を詰められ、思わず身を引く。
「まだ15だよ!愛想が悪いのよ」
「15かぁ」
鼻息荒く近づいてくる男。
「やめときな!あんた捕まるよ!」
晴美はさっさと身支度を終えると、男を連れて出て行った。