入れかわりクラスカースト
「皆んな、静かにしなさい!」
先生が大声で止めるけど、コールはやまない。
「早く謝ったら?」
まどかに小突かれる。
でも、謝れば認めてしまうことになるじゃないか。
私はそんな財布、盗ってないのに…。
『泥棒』がいつの間にか『謝れ』に変わっていた。
謝らないといけないの?
私が底辺だから?
やってもいないことをやったと認めないと、ここでは生きていけないの?
「──もういいわよ」
女王様のひと声で、教室が静まり返る。
「お金は入ってなかったし、こうやって戻ってきたから」
「城崎さん、それでいいの?」
先生の問いかけに「はい」と答えた美香に、クラスから称賛の拍手が送られる。
それを私は、俯いて聞いていた。
「奥田さん、放課後に職員室に来なさい」
「……はい」
私が返事をすると、教室の空気は元に戻った。
何事もなかったかのように。
チャイムが鳴って、皆んなが友達と連れ立って教室を出て行く。
皆んな笑っている。
とても楽しそうに。
底辺の私には、笑うことさえ許されていない。
笑うことさえ──。
「奥田、大丈夫か?」