入れかわりクラスカースト
いじめなんて、どこにでもある。
私だって昔は、よくいじめをしていたものだ。
もちろん、絶対に見つからないように。
でも最近の子って、堂々と痛めつけるからこっちも困る。
止めたって、どうせまた新しいいじめが始まる。
それならいっそ、誰かにいじめの役をやってもらいたい。
それでクラスが丸く収まるなら、こんないい解決策はないじゃないか。
その点、この奥田夕子は騒ぐことなくジッと耐え忍んでいたから、それなりに重宝していたのに…。
「私は美香なんです!」
朝からずっと、その一点張りだ。
どうやら、いじめられ過ぎて頭がおかしくなったらしい。
いじめているのは勿論、城崎美香のグループ。
誰も助けない時点で、クラス全員がいじめているといってもいいが。
「城崎さんに注意しておくから」
「だから私が、美香なんです!」
必死の形相で腕を掴んでくるので、思わず振り払った。
「うっ!」と足首を押さえた奥田夕子を、静かに見下ろす。
「いい加減にして。先生、もう結婚するんだから」
そう吐き捨て、その場を立ち去った。
あんな子に構ってる暇はない。
結婚式はこの週末なんだから──。