入れかわりクラスカースト
「咲子、おめでとう!」
着飾った女子たちが、私を取り囲む。
「ありがとう!」
「本当に綺麗よ、ねぇ?」
周りがうんうんと頷くのを『そりゃそうだろ?』と見回す。
どれだけあんた達がオシャレしても、このウエディングドレスには敵わないんだ。
だって今日は、私が主役だから。
「結婚したら、教師の仕事はどうするの?」
「家庭に入って欲しいって言われたから」
「そりゃエリートだもんね」
「本当は続けたいんだけどね。生徒たちは自分の子どもみたいに可愛いから」
心にもないことを言い、好感度を上げる。
私の夫の父親も、実は教師だった。
校長まで勤め上げた、叩き上げだ。
私の父親と顔馴染みという縁で、夫と出会うことができたのは幸運だろう。
しかもその夫は、教師なんかじゃなく証券マンだ。
まさに、エリート中のエリート。
夫も『生徒思いの私』に惚れたのであって、そこはバレないように細心の注意を払う。
でももう、それもあと少しの辛抱だ。
「──誓います」
キスを交わし披露宴に突入しても、私の幸せの絶頂は続いていた。
学校関係者の席には、田所がいる。
あの女がつまらなそうな顔をすればするほど、私は幸せだったんだ。