入れかわりクラスカースト
「新婦の咲子さんは、学校の先生になるのが夢で見事にそれを叶えられました。今回、生徒さんを代表して、城崎美香さんにお祝いのメッセージをお願いします」
司会者に促されて、制服姿の美香がマイクの前に立つ。
私が直々に、美香に頼んだんだ。
これまでも、私はあの子を贔屓(ひいき)してきた。
桁違いに裕福だということ、学校への寄付金も多く、遅刻してきても大目に見、テストの点だって上乗せしてやった。
もちろん、いじめの件も伏せている。
その代わりといってはなんだが、スピーチを頼んだ。
『生徒に愛されている、良き先生』
それがお題だ。
「先生、結婚おめでとうございます」
美香がはにかむと、場内の空気がさらに優しくなる。
まさかあの子が、悪魔のように奥田夕子をいじめてるなんて誰も思わないだろう。
それが分かっていても、夕子を助けたところでなんのメリットもない。
美香のほうについたほうが、明らかに見返りが大きいんだ。
「服部先生は、私たち生徒をちゃんと叱ってくれる先生です。ときに優しく、ときに真剣に、私たちのことを思って怒ってくれる、本当に生徒思いの先生です」
なかなか、良いんじゃないの?