暁のオイディプス
序章
どの帝の時代だったか忘れたけれど、寝る前によく物語を読み聞かせてくれる女性がいた。
私が眠るまでの間。
たぶんそれは母だったのだと思う。
もう顔も思い出せない、幼い頃に亡くなった母。
でも声だけははっきりと覚えている。
……後年、母がよく読んでくれていたその物語は、かの有名な『源氏物語』だったのだと気付いた。
偶然にも主人公・光源氏の立ち位置は、今の私のそれに酷似している。
母を早くに亡くしして。
父はこの国の権力者で。
……ただ残念なことに、私には「光り輝くような容姿」までは備わっていない。
物語の設定が今の自分にたまたま似ているだけに過ぎない。
平凡なこの私と、この世を超越した存在ともいえる光源氏とは、あまりにも違い過ぎる……。
私が眠るまでの間。
たぶんそれは母だったのだと思う。
もう顔も思い出せない、幼い頃に亡くなった母。
でも声だけははっきりと覚えている。
……後年、母がよく読んでくれていたその物語は、かの有名な『源氏物語』だったのだと気付いた。
偶然にも主人公・光源氏の立ち位置は、今の私のそれに酷似している。
母を早くに亡くしして。
父はこの国の権力者で。
……ただ残念なことに、私には「光り輝くような容姿」までは備わっていない。
物語の設定が今の自分にたまたま似ているだけに過ぎない。
平凡なこの私と、この世を超越した存在ともいえる光源氏とは、あまりにも違い過ぎる……。
< 1 / 67 >