暁のオイディプス
 あの女は、何者なのだろう?


 土岐家館の敷地内に住んでいるということは、一族などかなり身分が高い者と思われる。


 それにこれほどまでの、琵琶の弾き手……。


 気になってさらに踏み込んで覗こうとした時だった。


 「そこで何をしておる!」


 「!」


 驚いて振り向くと、そこにいたのは館を警護する者と思われる。


 「何者だ!」


 館に侵入した不逞の輩とみなされたのか、刀を抜いて近付いてきた。


 「違う、私は……」


 やむを得ず名乗ろうとした時だった。


 「何かありましたか」


 琵琶の弾き手の脇から、年配の侍女が飛び出して来た。


 「おかしな者が、屋敷の中を覗いていました」


 警護の者が侍女に私の存在を告げる。


 「そなたは何者です。姫様に何か用でも?」


 姫様?
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