暁のオイディプス
 「若殿(わかとの)」


 稲葉山城内執務室での会合が終わり、城の外へ出た時。


 明智光秀が私を追いかけてきた。


 私より一歳年下の光秀は、美濃守護土岐家の血を引く明智家の後継者で。


 幼少期より文武両道、見目麗しく、父もかなりお気に入りの様子。


 将来は重臣として、この斎藤家を支えていくことになるであろう。


 いずれ家督を継ぐ私の片腕として、光秀は活躍してくれると予想されている。


 「今日は快晴で、季節の割にはかなり暖かい一日になりそうです。遠出に出かけませんか」


 「悪くないな」


 もうすぐ冬の訪れで、馬で遠出をするにはいささか寒すぎる季節となる。


 まだ日も高かったこともあり、光秀の誘いに乗り、しばし馬を走らせることにした。
< 4 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop