暁のオイディプス
②
***
その年(1548年)の暮れも押し迫る頃だった。
「織田信秀から和睦の書状が?」
数か月前、ここ稲葉山城目前まで攻め込んできたものの、父によって撃退され命からがら尾張まで逃げ帰った織田信秀から、和議を請う書状が届いたとの知らせがあり、城内執務室へと急いだ。
父・斎藤利政を中心にごく少数の重臣のみが呼ばれていた。
明智光秀も駆けつけていた。
先の戦ではこちらが大勝していたこともあり、和議に応じる必要はないのではという意見もあったけど、今は美濃の国内を統一することが優先として、和議への道を検討することとなった。
この美濃は先の支配者・土岐家を慕う豪族もまだ多く、周辺諸国との国境地帯に所領を持つ者どもは、常に寝返りの危険性があり油断ならない。
美濃の国内は決して一枚岩ではないのだ。
「織田は和睦の条件に、どのようなことを申しているのですか」
今回の勝者は我ら、織田は敗者なので領土割譲などを申し出てくると期待したのだが、
「嫡男の信長(のぶなが)の嫁として、我が娘・帰蝶(きちょう)を迎えたいというのだ」
父の答えに私は驚いた。
その年(1548年)の暮れも押し迫る頃だった。
「織田信秀から和睦の書状が?」
数か月前、ここ稲葉山城目前まで攻め込んできたものの、父によって撃退され命からがら尾張まで逃げ帰った織田信秀から、和議を請う書状が届いたとの知らせがあり、城内執務室へと急いだ。
父・斎藤利政を中心にごく少数の重臣のみが呼ばれていた。
明智光秀も駆けつけていた。
先の戦ではこちらが大勝していたこともあり、和議に応じる必要はないのではという意見もあったけど、今は美濃の国内を統一することが優先として、和議への道を検討することとなった。
この美濃は先の支配者・土岐家を慕う豪族もまだ多く、周辺諸国との国境地帯に所領を持つ者どもは、常に寝返りの危険性があり油断ならない。
美濃の国内は決して一枚岩ではないのだ。
「織田は和睦の条件に、どのようなことを申しているのですか」
今回の勝者は我ら、織田は敗者なので領土割譲などを申し出てくると期待したのだが、
「嫡男の信長(のぶなが)の嫁として、我が娘・帰蝶(きちょう)を迎えたいというのだ」
父の答えに私は驚いた。