愛の距離がハカレナイ
3
「8年の腐れ縁なのに、武田の家に来るなんて初めてだな。」

玄関を開けるなり、そんな言葉をこぼした水島は私ににこりと笑いかける。

いつもと違う水島の様子に私は思わず顔を背けてしまった。

「…いらっしゃい。」

何だかくすぐったい気がする。

会社から帰って、何をしたらいいのか分からなかった私はとりあえず夕食の支度に集中した。

水島がここへ来る‥。

それはどういう事なんだろう。

水島が私を好き‥?

そして私は水島を好きなんだろうか。

料理をしている間もその事が頭をぐるぐる回っていた。

そしてチャイムが鳴ったのだ。

私は中へ促そうとして、水島に背を見せた。

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