愛の距離がハカレナイ

南川課長のその一言は、私の中にストンと落ちてきた。

会社へ戻ると、いつもの業務に戻ってパソコンへ向かう。

外へ出た分、少し残業をしなくてはならない。

「じゃあ、上手に仕事を切り上げて家に来てね。」

帰り支度をした香澄にそう声を掛けられて、ふらふらと手を振る。

そしてそっと祐介の方を伺った。

祐介も私に気が付いたようで、人差し指を1本こちらに示して来た。

あと1時間ほど仕事がかかるようだ。

私はにこりと笑ってうなずく。

祐介の目が自分の目に映った瞬間だった。

「武田さん、頼んでいた書類は出来そうかな？」

珍しい南川課長の催促だった。

「あともう少しです。」

「それだけは仕上げていってくれ。」