愛の距離がハカレナイ
9
それは南川課長と社用車に乗っている時だった。

「武田さんは聞いたかな?」

真っ直ぐ前を見ながら運転をしている南川課長。

私は心当たりがなくて、どう返事をしていいのか迷っていた。

「水島の異動が決まったんだ。ベトナムへ3年程行ってもらう。」

「えっ?」

うちの会社がアジアに力を入れるようになってしばらくたつ。

「そう、栄転だ。私が推薦をしたんだ。私の経験からも、この異動はこれからの水島にはきっと為になる。」

そう、そんな南川課長もタイへ数年行っていたはずだ。

「水島にはそれだけの期待をかけている。」

確かにこの年齢でアジアへ出る事は出世の近道でもある。

「そう…、ですか。」

私の動揺は隠す事は出来なかった。

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