愛の距離がハカレナイ
「仕事に集中しきれていなかったな。南川課長が帰ったのも気が付かなかったんだろう?南川課長がお前より先に帰るなんて…。」

大きく溜息をついた祐介が怖い顔を私に向けた。

「何かあったのか?」

ああ…、祐介はどれだけ私の事を見てくれているんだろう。

それに引き換え、私は自分だけの考えに捕らわれてしまって、周りを全く見えていなかった。

「…阿里?」

「えっ?」

祐介の大きな影が私に覆いかぶさる。

「何がお前をそんな表情にさせるんだ?」

「祐介‥、苦しいよ。痛いって…。」

笑顔を作って、上手にはぐらかそうとした。

「無理するな。俺にはちゃんと話せ。何でも聞いてやる、いつものように。」

祐介にこう耳元で囁かれた瞬間、私の中で何かが崩れ落ちた。

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