愛の距離がハカレナイ
私はうつむいて、一度息を吐いた。

そしてしっかりと顔を上げ、祐介の目を見た。

「…阿里、こないだ来た時の俺の第一声は覚えているか?」

-阿里、結婚しよう。-

私は目に熱いものを感じる。

「あんな大事な事をあんな風に軽々しく口にしてはいけなかったんだ。」

ああ…、涙が流れないと良いけど。

私はテーブルの下で、ぐっと手に力を入れる。

「俺は阿里と離れたくないばかりに…、お前を一緒にベトナムへ連れていく事しか考えていなかった。」

えっ…?

「それには結婚をするしかないとばかり思い込んでいた。」

「…ゆ…、祐介…?」

「やっと固い表情が崩れたな。」

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