君と二度目のお別れをします。
「終わったら、駐車場で」
愛おしげに私を見つめた一貴さんが、そっと唇を重ね合わせてくる。
目を閉じてキスを受け入れる私に、一貴さんは角度を変えて何度も唇を重ねた。
「真面目で仕事熱心な副社長」で通っている一貴さんが、会社で私に触れてくることは滅多にない。
だけどごくたまに、ふたりきりの密室でこんなふうにキスしてくれることがある。
そういうときは、誰かに見つからないだろうかというスリルと会社でこんなことをしてもいいのだろうかという背徳感とで、普段のキス以上に胸が昂ってしまう。
「一貴さん、そろそろ仕事に……」
何度目かのキスのあとに身を引こうとすると、いつもなら優しく微笑んでくれる一貴さんが私のことをジッと睨んできた。
「一貴さん?」
一貴さんの目は据わっていて、あきらかに様子がおかしい。
訝しく思いながら僅かに首をかしげたとき、一貴さんが私の両肩を乱暴につかんで副社長室のドアに背中を押し付けてきた。
突然背中に受けた衝撃に顔をしかめていると、ガチャンとドアの錠がかかる音がする。
一貴さんの不可解な行動に目を瞬きながら顔をあげると、彼がいつになく雄々しく引き締まった表情で私を見つめていた。
その表情に、不思議な既視感があってドキリとする。