君と二度目のお別れをします。
「あ、の……」
おずおずと話しかけると、一貴さんが片手でぐっと私の顎を引き上げて唇に嚙みついてきた。
普段は私の反応を確かめながら優しくキスしてくれる一貴さんが、私の唇に嚙みついて、吸い付いて、強引に舌を絡めてくる。
自分本位に攻めてくるキスは息苦しい。でも、いつもの受容的な優しいキスよりも高揚感があって。自分がどこにいるかを一瞬忘れてしまいそうになった。
頭が蕩けて膝から力が抜けるくらいまで私にキスをしたあと、一貴さんがゆっくりと唇を離す。
キスのあとにコツンと額をぶつけてきた一貴さんは、激しいキスで息切れ寸前の私と違って、全く呼吸を乱していなかった。
「すげー。なんか、気合いで入れたわ」
「か、一貴さん?」
ぼそりと漏れ聞こえてきた低い声に違和感を感じていると、一貴さんが私の額にグリグリと額を押し付けながらじろりと睨んできた。
「誰が一貴だよ」
「え?」
「まだわかんねーの? おれのキス、もう忘れちゃったんだ?」
怒気を含んだ低い声。目の前にいるのは確かに一貴さんなのに、その話し方や眼差しが思い出させるのは別の男の名前だった。