君と二度目のお別れをします。
1.報告します。
目の前で、麦茶の氷が解けてカラリと音を立てる。
閉め切った窓の向こうからセミの鳴き声が聞こえてくるほどの沈黙に、私は膝の上に置いた手を握りしめた。
緊張で手のひらが汗で湿っている。何を言われても受け入れる覚悟で、握りしめた手に力を入れると、彼のお母さんが優しくふっと笑った。
「暖乃ちゃんもついに結婚するのね。それを聞いて、安心したわ。ねぇ、おとうさん」
「そうだな。暖乃さんが毎年命日やお盆には欠かさず家に顔を出してくれるのは嬉しいけれど、いつまでも透也のことを引きずらずに前に進んでもらいたいと思ってたんだよ」
私の報告を聞いた彼のご両親が、和室の隅にある仏壇と彼の遺影に視線を向けながら目を細める。
正直なところ「たった3年でうちの息子のことを忘れるなんて」とか「自分一人だけ幸せになろうとするなんて薄情だ」とか、そんなふうに言われる覚悟はできていた。
それなのに、私の報告を優しい笑顔で受け入れてくれた彼のご両親の温かさに胸が熱くなる。