君と二度目のお別れをします。

「あの、今何かおっしゃられましたか?」

「いいえ、何も言ってないわよ」

「そう、ですか……」

なぜか透也の怒声が聞こえたような気がしたのだけど。私の気のせいだったのだろうか。

首を傾げながら、両手で横髪をかきあげるようにして耳を撫でる。

どうして透也の声が聞こえたなんて思ったのだろう。

お盆には亡くなった人の魂が帰ってくると言われているけれど。だからって、彼の声がはっきりと聞こえてくるはずがない。

仏壇に手を合わせながら透也のことを考えすぎていたから、空耳が聞こえてしまったのかもしれない。

それにしても、聞こえてきた空耳が「ふざけんな」なんて。空耳ですら素直に「おめでとう」と言ってくれないところが透也らしい。

付き合っていたときの透也は結構嫉妬深かったから、私の結婚を知って案外天国で不貞腐れているかもしれない。

「透也、また来るね」

私は遺影の彼に向ってそう呟くと、正座を崩して立ち上がった。



< 6 / 22 >

この作品をシェア

pagetop