君と二度目のお別れをします。
2.憑いてます。
「副社長、こちら、今日中にと頼まれていた資料です。ご確認お願いします」
「ありがとう、高沢さん。特に問題はなさそうだね」
手渡した資料を確認したあと、千堂副社長が私に微笑みかけてきた。
「あぁ、それから……。このデータを数日中に纏めといてほしい」
「かしこまりました。では私はこれで」
千堂副社長から受け取った封筒を脇に抱えて頭を下げる。そのまま退出しようとすると、副社長が眼鏡を外してデスクから立ち上がった。
「暖乃」
副社長室を出て行こうとしていた私を、千堂副社長が少し甘さを含んだ声で呼び止める。
直属の秘書ではなく恋人を呼ぶときのそれに振り向くと、副社長が歩み寄ってきた。
「新居の内覧、今夜7時にお願いしてるけど仕事は終わりそう?」
「はい。大丈夫です」
笑顔で答えると、千堂副社長が私の左頬に手を添えた。