ロミオは、愛を奏でる。
「じゃあ、ここで…
イト、気を付けて帰れよ」
駅のロッカーの前で
リョーちゃんの手がイトから離れた
「うん…」
「イト…」
「ん?」
イトから
一度離れたリョーちゃんの腕に
また引き寄せられた
ドキン…
「…リョー、ちゃん…?」
息ができないくらい
力強く抱きしめられた
ドキドキ…
ドキドキ…
ドキドキ…
締め付けられてる胸が
無理に鳴ろうとしてる
「今日は、酔ってない…」
耳元でリョーちゃんの声がした
ドキドキ…
ドキドキ…
ドキドキ…
言葉を発したリョーちゃんの唇が
ゆっくりイトの耳に当たって
それから離れた
ドキドキ…
ドキドキ…
ドキドキ…
胸の音だけが
どんどん早くなるばかりで
何て言ったらいいか
どーしたらいいか
わからなかった
「ごめん…」
イトから離れて
リョーちゃんはそぉ言った
なんで謝るの?
「リョーちゃん…」
「あ、時間ないかも…」
「うん…
リョーちゃん、バイバイ!
気を付けてね…」
リョーちゃんは手を振って
スーツケースを引いて行っちゃった
イトが知らない
遠い国に
謝らなきゃいけないのは
イトの方だったかな?
リョーちゃんは抱きしめてくれたのに
ビックリしすぎて何も言えなかった
なんて言ったらよかった?
いってらっしゃい?
行かないで…?
好きだよ、リョーちゃん
そぉ言ったら
リョーちゃん、なんて言ってくれた?
リョーちゃんは
20歳になったら迎えに来てくれるの?