また君と恋する
湊君の胸ぐらから手を離し、逃げるように部屋を出た志希は、

「志希!」

真白さんの呼びかけにも応じず、そのまま階段を下りて行った。

一瞬目が合ったけど逸らされてしまい、私は何も声をかけられないままその背中を見送った。

「ったく……」

部屋に湊君を置いてドアを閉めた真白さんは、頭を掻きながら困惑の表情を見せていた。


「ふぅ」

ダイニングに移動し、お婆ちゃんに入れてもらったコーヒーを啜って一息吐く真白さん。

志希は、『ちょっと出かける』と言って家を出て行ったらしい。

「由麻ちゃん、ごめんね。驚いたっしょ?」

「まあ……少し」

「私も、2人があんな風に兄弟喧嘩するのは初めて見た。喧嘩しない兄弟はいないってことね」

真白さんはうんうんと頷きながら感慨深そうに呟いた。
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