ライラックの恋

――...

昨日とは打って変わった晴天。

あおい空だった。

『いいお天気...』

病院の駐車場に車を停め、院内に歩くまでの短い距離で心地よい風を感じることが出来た。

エレベーターに乗り、目的の階を押す。

きっと、この一連の流れは目を閉じても出来ると思う。

そのくらい、繰り返してきた。


少し、予定より早く着いたな。
まだ、おばさん来てないよね。


エレベーターを降り、ナースステーションに向かう。

『こんにちは、すいませ...、』

「こんにちはー!
あ、お部屋移動されてるんですよ!
廊下の突き当たり、1番奥の個室です!」

『あ、ありがとうございます。』

すっかり看護師さん達とは顔見知りのため、用件を言う前に教えてくれた。

『個室は変わらないんですね。』

「はい。ちょっとナースステーションの傍に移って頂きたい患者さんがいらっしゃったので、石川さんにお願いしたんです。」

それは、【容体が安定している】と捉えていいってことなのかな。

きっと、答えに困らせてしまうと思い口を噤む。

『そうなんですね、分かりました。』

「先週、いらっしゃらなかったのでご存知ないだろうなぁと思って。石川さん、待ってますよ〜!」

『ふふ、だといいですけど。』

頭を下げて、教えられた病室に向かう。


コンコン...

...返事はないんだけどね。

『お邪魔しまーす。』

中に入ると、いつもと同じ光景。

『ちょっと忙しくて、先週は来れなくてごめんね。...朱生。』
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