ライラックの恋
――…
蒼「あ、そう言えば入学式で挨拶するんだって!」
その日の帰り道、蒼太が突然話し出した。
昔から、主語がない時があるのは蒼太の天然たる所以なのかな。
『もしかして、朱生《しゅう》?』
なんとなく、誰の話かは分かるけど。
蒼「そうそう!」
石川朱生・蒼太の弟。
私たちの2個下で、この春高校1年になる。
『すごいね!
朱生も蒼太に似て頭良かったもんね!』
朱生とも、幼なじみだから昔からよく一緒に遊んでた。
中学に上がった頃から、なんとなく素っ気なくなった気がしてたけど同じ高校だしまた昔みたいに仲良く出来るといいな。
蒼「頑張って勉強してたもんなぁ、朱生。
お兄ちゃん、鼻高いわぁ~」
そう言って自分のことみたいに嬉しそうな蒼太。
蒼太のこういう所が、堪らなく大好きだ。
『ねぇ!』
蒼「ん~?」
『...周り誰もいないし、少しくっついていい...ですか?』
朝のこともあるし、了解をとることにした。
蒼「紫乃~...いいに決まってるでしょ!」
『...ぅわ!』
蒼太は笑いながら、手を取りぶんっと繋いだまま上に振り上げる。
身長差もあり、よろけそうになる私を見てまた嬉しそうに笑ってる蒼太。
蒼「もう毎日紫乃が可愛くて困るよ、俺。」
『...ばーか。』
言い返すこともせずに、目尻を下げて笑う蒼太の横顔を盗み見ながら緩む口元を押えた。