花筏に沈む恋とぬいぐるみ
24話「奇縁」
24話「奇縁」
「なんで、凛さんが入ってるんですか!?」
「早く知りたかったから。それなら、俺も行くのが手っ取り早いだろ?」
「だからって、勝手に鞄の中に入らないでくださいよ!テディベアの体だからって………!」
「凛様、とおっしゃるのですか?」
間抜けなやり取りを一堂は微笑ましく見つめた後、畳の上で立ち上がる彼に合わせて、少しだけ体勢を低くして顔を見つめていた。
「あぁ……。おまえが、十三師か?」
「はい。一堂と申します。長い旅路をせまいところで過ごして大変でしたでしょう。……何か飲み物を……凛様は食事が出来ますか?」
「……出来ないな」
「そうですか。先ほど、乙瀬様から教えていただいたのですが、凛様は生きている方だとか。空腹は感じないのですか?」
「俺の体に入った奴が代わりにバクバク食べてくれている。だから、空腹も満腹もあまり気にならない」
「そうだったのですか」
凛とした声に、おっとりした口調。それでいて、洗練された丁寧な言葉。まるで自分より年上の女性と話しているようだったが、目の前の彼女は少女。不思議な感覚だったが、前回の事もあるので、花も少しずつ慣れてきた。が、凛は一堂をまじまじと見ている気配を感じた。
「それでは、私に相談というのは、凛様についての事でしょうか?」
「はい。凛の本来の体には、別の魂が入っている。四十九日の奇の魂です。魂を成仏させるためには、魂が入ったものを燃やさなければいけない事になっています。けれど、それが生身の人間の体の場合、そんな方法はとれないですよね?……その場合どのような対処をすればいいのかわからなくて。十三子様ならばご存知かと思いまして」