花筏に沈む恋とぬいぐるみ
凛は当たり前のように言葉はとても心強い。
雅が体を使い暮らしている事を認め、そして、四十九日の奇が終わる時に供養する気持ちではいるようだが、それで自分が死ぬつもりもないようだ。
その時に花はハッとした。
自分は一瞬でも諦めてしまいそうだったのだ。
一堂に方法がわからないと言われただけで、もう無理なのだと思ってしまっていた。そして、凛は雅のために体だけではなく命さえも譲ってしまうのではないか、と。それほどに、彼ら2人の信頼は厚いとわかっていたから。
「俺はあいつの店も夢も続けなきゃいけないんだ」
その声はとても小さいモノだったが、周りは静かな庭という離れの中でははっきりと聞こえた。
意志の強さを物語る、固いかたい声が。
凛が諦めていないのに、自分が諦めるわけにはいかないのだ。
それに、1番良い形で全て進んでいきたい。その願いは花も同じなのだから。
「四十九日の奇の奇という言葉は、私は奇跡ともう1つ、奇縁という意味も含んでいると思います」
鈴のなるような凛とした声で、一堂は2人を見渡しながらそう告げた。
「奇縁ですか?」
「はい。奇跡の奇に縁を結ぶの縁です。思いがけない不思議な巡りあわせと言う意味です。四十九日の奇にぴったりな言葉ではありませんか?誰でもその奇縁を結べるわけではない。めぐり合わせで結ぶことができる奇跡。それが、四十九日の奇だと思っています。巡り合わせは幸せな事だけではないでしょう。悪い縁もあるのです。けれど、それさえも、きっと奇縁なのです。必要だから結ばれるのです」
「それが死を意味するとしても、か」
「そうですね。だからこその奇縁なのだ、と」
「そう、だな」