花筏に沈む恋とぬいぐるみ
「最後に、この最高級の瞳をつければ完成だ」
「いいな。やっぱり白い体にそれは映えそうだ」
「そうだよね。そして、真っ黒のワンピースを着せれば、もう花ちゃんだよ」
凛とそんな会話を交わしながら、引き出しから取り出した箱を手に取り、蓋を開ける。
そこには、夕日を浴びて少し赤みを増しながら輝く大粒の宝石が姿を現した。赤い瞳はガーネット。緑の瞳はエメラルド。それは、花の父親が、妻に渡す事が出来なかったオーダーメイドで作ってもらったテディベアの瞳についていたものだ。父が四十九日の奇で魂を宿し、そして燃やしてしまったテディベアの瞳。
その時に凛と雅が新しいものを作ると、花の父親と約束していたものだった。
それを凛と雅は守ろうとしてくれていたのだ。
父親がオーダーしたものはこげ茶色の毛をしていたが、今回のものは真っ白だった。
「最後の仕上げだね。顔はバランスが大切。瞳は特に慎重に、ね」
そう言いながら、宝石に金具をつけて、テディベアの顔に宝石を置きながら何度も調節をして、丁寧に縫い付けていく。
「ぬいぐるみや人形は何といっても顔が命だからね。バランスを見て、しっかりと可愛いくなれーって願いながらつけていくんだ」
ガーネットをつけて、もう1つの瞳をつけて微調整を繰り返す。
そして、満足がいったのか、手を止めてジーッとテディベアを見つめる。その瞳はまっすぐで表情は真剣そのものだ。
そして、ひとり頷いた後、完成したテディベアに微笑みかけると、優しく抱き上げる。
「よし!とびっきり美人なフィオの完成だよ。お待たせ、花ちゃん」
「………あ、ありがとうございます」