花筏に沈む恋とぬいぐるみ
「ごめんね。みっともない姿を見せちゃって」
「ううん。雅さんの本当の気持ち聞けて、私も嬉しかったよ。私も雅さんと凛さんのお店の応援するから。頑張るっ!」
「あぁ……頼もしいよ」
泣き腫らした目のまま、微笑み合う雅と花。
目も頬も鼻も真っ赤になっていたが、思いきり泣いてすっきりしたのか、お互いに落ち着いていた。
「じゃあ、また泣いちゃう前にお願いするよ。それで、どうすればいいの?」
「花……」
「うん……」
花はポケットに忍ばせていたそれを凛に渡す。
テディベアの体の凛よりも大きいそれを受け取り、少しよろけながらも何とか受け取り、凛は雅の方へと体を向けた。
「雅、目開けていいぞ」
「……うん」
不安と期待が混じった表情のまま、雅はゆっくりと目蓋を開ける。
視線を下に向け、それが目に入った瞬間に、雅は大きく目を開いた。
「それは……」
「俺と花から、お前へのプレゼントだ。これ、一緒に持ってけ」
凛が持っていたのはクマのぬいぐるみ。
といっても花浜匙で売っているような立派なテディベアではない。まるで、小学生の子どもが初めて手芸をしたような、平べったいクマの形をしたぬいぐるみとも言えないようなものだった。フワフワの毛がついた生地をクマの形に切り抜き、2枚合わせた間に綿をつめて、顔を縫っただけの質素なものだった。
縫い目もガタガタの、売りにもにもならないただのぬいぐるみ。クリスマスツリーに飾るような薄っぺらい人形だ。
けれど、これは特別な意味があるもの。