花筏に沈む恋とぬいぐるみ



 「もしかして、これって凛が……」
 「そうだよ。このテディベアの姿のまま頑張ってつくったの。なんとか、手に針やハサミを固定してすべて一人で作ったの」
 「そして、このレースのジャケットは花ちゃんが
 「作ったよ。雅さん一人だと寂しいかなって。雅さんにあんな立派なもの貰ったのに申し訳ないけど………」
 「そんな事ないよ!!これのプレゼントすごく嬉しい。……何よりのプレゼントだよ……」


 雅は芝生の上に膝をつき、凛からそれを受けとると大切に胸にしまいこむ。
 ギュッと目を瞑る彼の顔は、とても幸せそうで、口元は弧を描いている。


 「何かコソコソしてるなーって思ってたけど、四十九日の奇について調べる以外に、こんなものまで準備してくれてたんだね」
 「あぁ……」
 「凛は針刺したりしなかった?花ちゃんもこんな小さいもの編むの大変だったでしょ?」
 「楽しく作ってたよ………あの、雅さん、どこも調子かわったりしてない?」


 花達が一堂から話を聞いて準備したものは雅へのプレゼントだった。
 十三師である一堂が聞いた話では、四十九日の奇で魂が宿っていたものが、その期間の途中に別のモノへと変わったと言う話だった。
 そして、その時はその人物がその時にプレゼントを貰い感動した時に、魂がそちらへと移ったというのだ。

 そのために、凛と花は雅が喜ぶものを必死に考えた。
 雅の大好きなものはぬいぐるみ。そして、彼は自分達との関わりを何よりも大切にしてくれていた。それならば、手作りのぬいぐるみにしてはどうか。それはすぐに思い付いた。

 けれど、凛はテディベアの体になっていため、かなり大変だった。しかも、雅にばれないようにとなると、時間も限られてくる。それため、完璧とはいえない出来だったかもしれないが、今の2人にとっては満足のいくものだった。雅が喜んでくれる自信もあった。

 けれど、魂の移行が無事に行われるか。
 それは、プレゼントを渡してみないとわからないのだ。


 「え?どういう事?これが、何かの鍵なの?」
 


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