花筏に沈む恋とぬいぐるみ
大切に両手にぬいぐるみを持ち、眺める雅は、不思議そうにしている。
花が彼の体をみても、何も変わりはないようだ。
花と凛は顔を見合わせた。
失敗したのだろうか。不安が一気に押し寄せてくる。他の方向など準備してもいなく、もう別の案もない。
………やはり雅を無事に送れないのか。
雅を成仏させて、凛の体を取り戻す。
その両方を叶える方法はないのだろうか。
花は必死に他の方法を考え、雅を凛を救いたい、その気持ちだけで頭を回転させ続ける。が、それでも何も思い付かない。
自分の不甲斐なさを改めて実感し、悔しさで体が小刻みに震えてしまう。
けれど、その時何かその場の雰囲気が変わったのを瞬時に察知した。
花も話を止めていたが、凛と雅も何もしゃべっていないのだ。
それに気づいた時には、全てが終わっていた。
クマ様と呼び、凛の魂が入っていた歪な顔のテディベアは力を失い、パタッと後ろに倒れた。
そして、雅の魂が入っていた凛の体も力が抜けたように肩がだらんと落ち、あれほど大切にしていた、薄っぺらなクマのぬいぐるみも彼の手からすべり落ちて、地面に落ちた。
「……み、雅さん?大丈夫………」