花筏に沈む恋とぬいぐるみ
「………じゃあ、本当に終わりにしようか。今なら、みんな笑顔だ。そのままで見送って欲しいんだ」
「わかった」
凛は頷くと、凛は庭の地面にゆっくりと置いた。
そして、蝋燭にマッチで火をつける。弱い風に吹かれ火はゆらゆらと揺れる。それに合わせて温かな光りも動き始める。
「いいか、雅………」
「うん。凛、花ちゃん、本当にありがとう」
「こちらこそだよ、雅さん!」
「あっちの世界で作ったもの、いつか見せろよ」
「うん、沢山作ってる。凛に負けないテディベア作ってるから!」
「俺だって、負けないさ」
そう言うと、凛はそっと雅の魂に火を近づけた。
赤い炎はすぐにクマのぬいぐるみに移る。
「………あぁ、本当だ、温かいな。……全然怖くない」
「雅ッ!俺を店に誘ってくれてありがとう。嬉しかったんだ、とても!」
ぬいぐるみが灰にになり、雅の体が半分以上消えそうになった時、凛は雅にむかって大きな声で叫んだ。
それはきっと今まで言いたくても言えなかった、そんな大切な言葉。
それを最後の最後に、雅を送る言葉に変えて伝える。
「俺もだよ、凛。ありがとう……」
その声は風が囁いたかのように、空の上から降り注ぐように聞こえてきた。
凛と花が作った不格好なクマのぬいぐるみはもう灰さえも残らずに風が天へと運んでいってしまっていた。
雅との別れは、穏やかな微笑みの中に終わった。
その日、雅は大切なぬいぐるみと言葉と共に天へと上っていった。