花筏に沈む恋とぬいぐるみ
凛に思い切りないてもらうために、寄り添ったというのに、何故か花の方が涙が出てきてしまう。声が震えてしまったせいで、彼にすぐにバレてしまい苦笑される。
けれど、凛はバカにすることもなく、じっと下を見きながらしばらくの間、何かを考え込んでいた。
「………雅を成仏させた事も、俺の体を取り戻した事も後悔はしてないんだ。それなのに、雅と離れたくなくて、あのままでもよかったんじゃないか、なんて最低な事を思ってしまうんだ」
「そんなの当然の事じゃない。凛は、雅が大好きだったんだから」
雅を不安にさせまいと強気な態度で送り出した凛。
そんな彼の本音は、伝える事が出来なかったのだろう。
雅と同じように、彼もまた雅と離れるのが嫌だったのだ。願わくば、ずっと一緒に店を守り続けたい。テディベアを作って笑い合いたい。それがたとえ、魂だけの存在だとしても。
それが雅にとって良くない事であるとわかっていても。
けれど、理性と雅のその後の事を考えれば思いとどまれたのだろう。
これでよかった。そのはずなのに、別れがつらすぎて、間違えだと思ってしまう。
「雅も凛の事が大好きだから、このままでもいいって言ったんだと思うよ」
「………終わりの日が決まっていても、覚悟をしていても、別れって辛いんだな」
「そうだね」
「あー、雅も泣いてるのかな……」
「きっと泣きながら笑ってるよ」
「………そうなのか?」
「うん。だって、凛の本当の言葉、今頃聞いてるはじだもん。寂しいけど、嬉しいと思う。同じ気持ちだって言葉で聞けて」
「………そうだな」
しばらくの間、2人はお互いの顔を見る事もなく、ただただ体温を感じ合いながら、一緒に雅を失った悲しみに涙した。そして疲れるまで泣いて、2人で床で倒れるように寝てしまった。
凛の温かさは、よくクマ様を抱いていた頃と同じで、その頃を思い出しては嬉しくも切なくなるのだった。