花筏に沈む恋とぬいぐるみ
四十九日の奇についてのヒントをくれた事もあるが、自分1人で雅を見送っていたらどうなっていたのか。
寂しさと不安で、押しつぶされていたのではないか、と。
そして、テディベアを愛してくれて、手作りのプレゼントにも真剣に取り組んでくれる姿には励まされた部分もあった。
短い時間ではあったかもしれない。
けれど、中身はとて濃い。
花自身は、「自分は助けられた」と言っていたが、それは凛も雅も同じだった。
その感謝を込めて、優しく頭を撫でた。
スマホを見るとまだ夜明けを過ぎた時間。
凛は、もうすっかり目が覚めてしまったため、そのまま起きてシャワーを浴びる事にした。
泣きはらした目は腫れているし、汗も落としたかったのだ。少し冷たいお湯にしよう。そう決めて、脱衣所へと向かった。
この洋服を自分の体に着せたのは雅の魂。
そんな事を考えると、つくづく四十九日の奇というものは不思議なものだった。
雅はどんな思いでこの服を選んだのだろうか。そんな風に思い、ジャケットやシャツ、ズボンなどを脱いでシャワーを浴びる。
シャンプーに手を伸ばした時だった、視界に自分の左腕が見える。が、そこには肌色ではない真っ黒なものがついていた。始めはどこかで怪我でもしたのかと思ったが、よくよく見るとそれはマジックで書かれた文字だった。
「なんだ、これは………?」