花筏に沈む恋とぬいぐるみ
「宝物探しみたいで楽しいよね」
「そうだな。あ、そうだ。ドレス、今週中にあと何枚ぐらい作れそうだ?」
「んー、休みの日もあるし、5着は作れると思うよ」
「わかった。じゃあ、少し予約を再開しとくか。まぁ、即完売だろうけどな」
「この間、ネットで私が作った洋服を着たテディベアの写真を載せている人を見たの!すっごく嬉しかったなー」
「あぁ。そういう見ると頑張ろうって思えるだろ」
「うんッ!」
凛との話は大体がテディベアの事。
今は、忙しい時期で仕事の話がほとんどだった。けれど、花はそうでも凛と話すだけで楽しかったし、幸せだと感じていた。好きな事を夢中になって取り組める。大切な人と一緒ならば尚更だ。
「今日もじゃんじゃん作ろー!」
「頑張ってくれ」
「はーい」
上機嫌のまま凛の運転する車で店に戻り、さっそく作業場へと向かう。今日は店が休みの日だ。作業に専念できる。花は、返事をしながらドアを開ける。
そこは、雅がいた頃と変わらない作業部屋。
雅が座っていた場所には凛が座り、凛の場所だった所には花が座っていた。そして、その間には写真たちが2枚と宝石の瞳をした真っ白のテディベアが座っていた。
が、そこに昨日まではなかった変化があるのに花はすぐに気づいた。
「フィオのお洋服!かわいい!完成したの?」
雅が最後に作り上げた花のテディベア。そのテディベアは何も着ていなかったはずだが、今は黒のワンピースを着ていた。胸元には白のスターチスの花が刺繍され、腕はシースルーで華やかになっている。スカート部分はいろいろなレース生地を縫い合わせ作っておりとても豪華だった。
ドレスアップしたフィオは、いつもより微笑んでいるような気がする。
花はすぐにフィオに駆け寄り、それを抱き上げた。