花筏に沈む恋とぬいぐるみ
「凛さん、このテディベアも……まさか、四十九日の奇なんじゃ?……それに誰が……」
「俺はクマ様だ」
「………へ?」
「………俺もクマ様って呼んでるんだ。花ちゃんもそう呼んであげて」
凛は少し困った顔でそう言うだけだった。
花の質問には答える様子はない。要するに、聞いてほしくない事だったのだろう。
話題を変えられてしまっては、しつこく聞くことなど出来ない。
怒りにまかせて宝石の瞳のテディベアを投げてしまいそうになっていたが、もうその気持ちも驚きのせいでどこかに飛んでしまった。
「さて、じゃあ話の続きを聞かせて貰おうか」
「………なんでクマ何かに話さなきゃいけないの……」
落ち着いた花に先ほどの続き、花の父親について話せと言われるが、そんな話をするつもりはなかった。
最低な父親の話など、言葉にもしたくない。
「………おまえじゃない。そこの豪華な宝石がついたクマさんにだよ」
「………え………」
「同類としての勘だが、しゃべれるんじゃないか?」
クマ様の言葉に、花と凛は目を大きくして花が持っていたテディベアの視線が向けられる。
動きも、しゃべりもしなかったテディベア。
けれど、その時光も当たっていないのに瞳がやけに光っているのを2人と1匹は気づいた。
「…………申し訳ない」
弱々しく、悲しげな男性の声。
それは、まさしく花の父親のものであった。