花筏に沈む恋とぬいぐるみ
8話「懺悔と許し」
8話「懺悔と許し」
「申し訳ない。私が話していいのかわからなくて………」
「では、花ちゃんの荷物に自分から入ったのですか?」
「はい。どうしても、このテディベアだけは誰にも渡したくなかったのですから」
凛が質問をすると、宝石のテディベアはこくりと頷いた。
その声は、とても弱弱しく申し訳なさそうだった。
「それでは、亡くなった後に四十九日の奇でこのテディベアとして魂が宿ってから、全て見て聞いていて、一度も話さなかったのですか?」
「……はい」
「それは……」
凛が言葉を濁したが、それを聞いて黙っていられない人がもちろんこの場にはいる。
もちろん、花だ。
「なにそれ!しゃべれたのに、私に謝罪も何もなかったなんて、信じられない。ただずっと黙って見ていたの?私が、家を無くして友達からも逃げられて。お母様もいなくなって、一人になったのを黙ってみていたのッ!?
!?」
「花………」
「自分だけ死んで楽になるなんて許さない!私は供養なんて絶対にしない!犯罪者は死んでも悔やんで過ごせばいいんだわッ!!」
花はクマの手に持ったぬいぐるみを睨みつけながらそう言い放つ。
軽蔑と嫌悪。その気持ちを吐き出しても我慢などできるはずもなかった。
自分がされてきた事や罵倒する言葉や冷たい視線。
何もしていないのに、親族がやった事は全て自分にも帰ってくる。
同罪だ、と指をさされて罪人と同じ扱いをされる。
けれど、本人はあっけなく死んでそれを知らない。
怒らずに再会を喜べるほどに、聖人ではないのだから。
「おい。俺を抱き上げてもいいぞ」
「……何でそうなるの」
「俺をよく触っていただろ。不本意だが、落ち着いて話せるなら貸してやってもいい」
「いいです。もしろ、もう抱っこしたあげないから」
「可愛げのない女だな……」
「なんですって!」
「クマ様、仮にも花ちゃんのお父さんの前でそんな事をいうもんじゃないよ」