花筏に沈む恋とぬいぐるみ
ずっと昔から20歳になるのを楽しみにしてくれたのだろう。
そして花を育ててくれた母親に感謝するほどに、母を愛していたのだ。
それを目の前のテディベアが伝えてくれた。いや、テディベアになってでも戻って来た父が伝えてくれたのだ。
「お父様はしっかり罪を償ったのでしょう?すべてのお金を返したと聞きました。だから、許します。会社の事もお客様の事を考えれば、すぐに許すなんていけないのかもしれないけど。でも、私はお父様の家族だから。何があっても許しまう。私も大好きだから」
「花……ありがとう、ありがとう」
「でもね、もう私は大丈夫だよ。寂しくない。お父様の言葉を貰ったから。気持ちをしれたから。本当の事がわかったから。だから、お父様はもうゆっくり休んで」
「花ちゃん、じゃあ………」
「うん。長かった四十九日の奇はもうおしまい。私は普通の人より長い間奇跡を受けられて幸せでした。お父様を供養します」
花の言葉に、誰一人として反対する人はおらず、1人と2匹の温かい視線と笑みを感じ、花は真っ赤になった目と鼻のままに同じように微笑んだ。