花筏に沈む恋とぬいぐるみ
「おまたせー。依頼の電話だったから出れなくてって、花ちゃん」
「ん?おまえ、いつの間に来てたんだ。気づかなかった」
「ご、ごめん。返事がなかったから、勝手に入っちゃった」
「いいよいいよ。お仕事お休みなんだね。お疲れ様ー。紅茶持ってくるからソファに座って」
「でも、仕事が終わってからでも」
「ちょうど休憩をしようと思ってたんだ。もう少しで15時でしょ?おやつの時間」
「あ、ならこれどうぞ。家の近くで買ったものなんだけど」
前回、かなり迷惑をかけた事もあるし、手土産なしでくるのは申し訳なかったので近くの行列が出来るチーズケーキ専門店で購入してきた。
クマ様は食べらないかもしれないと思いつつも、3個購入した。「ありがとう!このチーズケーキ屋さん気になってたんだ」と凛は笑顔で受け取ってくれる。
「クマ様、チーズケーキ好きなんだよね。花ちゃんも好きなの?」
「好き、だけど。クマ様、食べられるの?」
「……………食べなくても平気だ」
その妙な間に「食べたい」という気持ちがこもっていたのに、凛と花は気づき申し訳なさそうにしながらも、少しだけ笑ってしまったのだった。
四十九の奇は大体が物に憑くため、食事はしない。
それはわかっていえども、きっと食べたいのだろう。そんな風に思うと、切ない気持ちになってしまう。けれど、クマ様は「俺の分まで食べたら太るぞ」などと言って、悪い空気を早く消そうとしているのがわかる。
やはり、クマ様はツンとしている部分もあるが優しいのだ。