花筏に沈む恋とぬいぐるみ
「着てすぐにすまないね。昨日の初めての休みはゆっくり出来たかな」
「はい。………何か問題がありましたか?」
「…………」
岡崎はすぐに本題に入ることはなく、花を安心させようととりとめもない話を始める。
けれど、花は朝一番に呼ばれた用件が気になりつい自分から聞いてしまう。大人げないと思いつつも、不安で仕方がなかったのだ。
すると、岡崎は作り笑顔をすぐに神妙なものに変えでゆっくりと口を開いた。
「本社の方にお客様から乙瀬さんについてのクレームが入ったんだ。その……こちらの店に相応しくない人間が居る、とね」
「そ、それが私、という事ですね……」
「…………」
わかってはいた。
万人に受け入れられる問題ではないと。
だからこそ、仕事で努力して認められようと頑張ろうと思った。今からがスタートだ、とも。
だが、それは職場の人間への事だった。乙瀬を知っているお客様は花がどんな人間か知らない。知ってもらうとしても、接客などを見てもらうとなるとかなりの時間を要する事になる。
認めてもらう前に、花がどこの生まれなのか、を気にしてしまえば、接客を拒まれてしまうのだ。
「………岡崎さん。そのお話を詳しくお話していただけませんか?伝えられた通りの言葉で大丈夫です。きっと、私が傷つかないように言葉を選んでくださってますよね?……どのようなお言葉なのかを知っておきたいのです」
「花さん……」
花がそう伝えても、岡崎はまだ渋りなかなか口を開けない。相当な事を言われたのだろう。
花が小さな頃から岡崎は花を知っている。そのため、つい2人きりになると名前で呼んでしまう事がある。岡崎に向かって、花が困り顔だが微笑むと、観念したように説明をしてくれる。