花筏に沈む恋とぬいぐるみ
クマ様は、素っ気なく言うが凛は気にした様子は見せずにニコニコと微笑んでクマ様を見ている。
クマ様の今の気持ちは、きっと1週間前の自分と同じなのだろうなと思った。大切な人がいなくなる事を直視できず、その話になると逃げようとしてしまう。そんな状態だ。
「そして、一番気になっているのはきっとこの体の事だよね。どうして、四十九日の奇なのに、人間の体に入っているのかって事」
「もしかして、亡くなっても体に魂が入れば動き出せるの?」
「それはないよ。僕の体は病魔に侵されていたからね。魂が入ったとしても、動けないだろうね」
「じゃあ、どうして」
「これは、凛の体なんだ………」
「凛の、って……?……え?」
彼が何を言わんとしているのかわからず、頭の中に疑問がわくばかりだ。
凛は首を横に倒し、困り顔のまま今までの事が全て覆す言葉を花に告げた。
「この体は凛という生存している人間のもので、死んだ俺は別の人間、玉矢雅(たまや みやび)。それが本当の名前」
「雅………。凛じゃない、の?」
呆然としながらそう言葉を漏らすと、凛と言っていた雅という男が頷いた。そして「雅さんって呼んでね」と、穏やかに言ってくる。
「じゃあ、凛というのは……」
「この店で働いていた友人だよ。俺の家族同然の大切な人だ。そして………」
「え、まさか……」