花筏に沈む恋とぬいぐるみ
雅の視線がテーブルの上のクマ様へと向けられる。
クマ様はまだ雅も花の方も視ずにうつむいた状態だった。そんな彼を見てしまったら嫌でもわかってしまう。
「クマ様が凛なの?」
「そうだよ。俺が凛の体に魂を入れたせいで、凛の魂が出てしまいテディベアにうつってしまったんだ。だから、クマ様は凛の魂が入っている」
「クマ様が本当の凛」
「彼は俺と同い年の神谷凛」
凛という男性は本当は違う男で、本当の凛はクマ様だった。
そんな事実をすぐに出来ずに、花は黙り込んでしまう。クマ様と雅を交互に見てはわけがわからなくなる。
そんな中でも変わらない現実がある。
凛の体についた雅という男は死んでおり、あと9日で四十九日が終わってしまうという事。
そして、名前は違えど、彼はこの約1週間あまりで花を守ってくれた人だという事だ。
「……ど、うして、もっと早くに話してくれなかったの」
「花ちゃんが悲しむと思ったから。凛が話さない方がいいって言ったし、俺自身もそう思ったんだ。君は、父親の四十九日の奇でとても悲しんでいたのだから」
「けれど」
「知っていて四十九日を悲しんで過ごすよりも、少しでも楽しんで暮らした方がいいでしょ?」
「そうかもしれないけど、そうじゃない!!クマ様の事、私だって四十九日の奇かなって思ってた。だから、もう悲しんでいたよ。誰がもう死んでしまっていたとか、四十九日の奇だっていうのは、もうどうでもいいよ。知りたかった。私を優しくしてくれた人達の事を、守ってくれた人を。そして、時間をもっともっと大切にしたかった。私なんかの仕事の事よりも、雅さんの事を聞きたかった」
「………花」