花筏に沈む恋とぬいぐるみ
「私も手伝いたい」
「………え」
「雅の魂がどうすれば供養できて無事にあの世にいけるのか。私も調べてみる。お父様の四十九日の奇でお願いした十三師さんにも聞いてみます」
「…………ありがとう、花ちゃん」
「…………」
「じゃあ、今からでも連絡を」
花はすぐに立ち上がり、スマホを部屋から持ってこようとした。が、それを雅が止めた。
「花ちゃんも凛も今日は寝てないだろう。少し寝ないと体を壊すよ。俺は生きてないから寝なくても大丈夫だけど、ね。少し休んで」
「でも時間がないし………」
「最後の日に体調を崩して花ちゃんや凛に見送って貰えない方が俺は辛いから、ね」
雅にそんな事を言わせてしまっては、花も凛も反論出来るはずがない。
もう朝になるが、どうせ仕事もない。
花は雅の言葉に甘えて、遅い就寝の時間にした。
凛は、自分の部屋に、花は雅の部屋で眠る事になった。
この家に泊まる時に過ごした部屋は雅のものだったのだろう。物は少なくなっているが、少し前まで誰かが住んでいたのもわかった。てっきり凛の祖父のものだと思ったが、そうではなかった。
花は布団にもぐりながら目を瞑ったがまったく寝れる気配がなかった。
あんな事実を聞かされた後だ。しかも、考えなければいけない事が山積みなのだ。そして、3人に残された時間は短い。
そんな風に思いつめてしまうと、ますます寝れなくなるのだ。
「だめだ。やっぱり寝れるはずがないよ」
ため息をこぼしながら、花はゆっくりと身を起こした。やはり眠れなかった、と雅に告げて起きてしまおうと思っった。雅の部屋を出ると、丁度凛の部屋から雅が出てくるところだった。
「あれ?花ちゃん、寝れないの?」
「うん。だから、起きちゃおうかなって」
「だめだよ。睡眠はお肌だけじゃなくて体調も悪くなっちゃうんだから。凛も今寝たところだし、俺が眠までついててあげるから」
「え、いいよ!寝顔見られるの恥ずかしい」
「花ちゃんは可愛いから大丈夫。それに、寝顔なんて、もう見た事あるでしょ。可愛かったよ」
「そういう問題じゃないの!」
「照れない照れない。さぁ、部屋に戻って」
そう雅に押し切られて、花は渋々雅の部屋に戻り、布団にもぐる事になったのだ。
けれど、雅が一緒にいてくれるならば寝れるような気がした。
もうこの店の人達のぬくもりに甘えるのが、自分の最大の癒しだと気づいているのだから。